新車は無論、格別であった。
相棒ではありながら、これまでの車は他のパートナーがいて、それを引き継いでのオーナーに収まっていた。もちろんここまで話してきたようにすべての相棒たちは両手に余るほどの愛着があり、何よりイタリアでの貴重な時間は彼らの軽快な足回りによって演出されたと言っても過言ではない。ただ、どの相棒もやはりある程度の操作癖を引きずってわたしのもとへ流れてきており、不具合いなどなくしかし、嫉妬とはいかないまでも走りながらにわかに二番煎じとやらを感じたことはあった。
まず、何と言っても匂いがいい。新車ならではの包装紙でくるまれたような新鮮さと言おうか。ところによっては防汚、傷防止カバーが掛けられているので、そのあたりも「あなたのためにこの車は生まれました」と言われているようでそりゃあうれしかったものだ。それがたとえカラーやフォームが人気なくて売れ残ったものであったとしても。
最初の新車はそう、ミラノ郊外にあるプジョーのディラーで働く当時、付き合いのあったイタリア人の勧めもあり動いたもの。307のステーションワゴンは、確か色と形の人気のなさから買い手がつかず売れ残ってしまっているから安くしとくよ、ということで購入を決めている。たしか自分の目星をつけていた中古車に支払う金額とさほど変わらず、それでいてローン払いができるということなどあり、“あれこれ迷わず新車なんだから”という単純明快で迷いのない自分との邂逅でもあった。
プジョー車としては確かにボテッとしていて、スポーティングを語りながら必ずしも体育会系とは程遠いボディでありながら、しかし乗り心地のゆったり感、荷物を多く運べる利便性などを考えると、二人のこどもがいる自分には最も適したアイテムではないかと時間を掛けずそのような愛着が湧いてきたことを思い出す。それを証拠に、2006年に我が家にやって来たこの車は一年目から6万キロを走破して、これまでの相棒の中ではどれよりも脚の伸びた、また行動範囲の広さには後々驚いたものである。“Australian”とタイトルされたことを考えると、大陸を駆け巡るカンガルーというイメージがメーカーにはあったのかもしれない。
そして後年2台目のプジョー、これもまた新車に乗り換えるわけであるが、このバトンタッチがなんとも鮮やかであった。15万キロを走ったカンガルーをディラーで引き取ってもらい、今度こそ色や形状に拘り、わたしが思い描いていた、いわばチーターと引き換えたのである。
堂満尚樹(音楽ライター)
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